コラム Column

どうすれば、有効な「ブランドマネジメント」が行えるか?(運用のポイント)【連載3/3】

ブランディング   2018/11/08  

皆さん、こんにちは。取締役の伊佐です。
「ブランドマネジメント」についての全三回のコラムも今回が最後となりました。

第一回:なぜ、「ブランドマネジメント」が重要なのか?(重要性)
第二回:どのように「ブランドマネジメント」を組み立てるか?(設計の考え方)
第三回:どうすれば、有効な「ブランドマネジメント」が行えるか?(運用のポイント)※今回

前回のコラムでは、ブランドマネジメントを設計するポイントとして、企業活動の「仕組み」をブランドと紐づけるという考え方をお伝えしました。今回お伝えするのは、設計したブランドマネジメントをどうやって運用するのかについてですが、実際に多くの企業が、この運用について最も苦労しているように思います。

 

営業数字の目標達成のために多くの企業が取り入れている手法に「KPIマネジメント」がありますが、ブランド戦略の実践・運用についても同様にこのKPIマネジメントが有効です。

一方で、先日、ブランド強化に取り組んでいる25社程の方が参加したセミナーの中で、「ブランドマネジメントをKPIにまで落とし込んでいるか」という質問をしたところ、手が挙がったのは2社でした。その2社も「KPIマネジメントに取り組んでみたものの、どうやって指標を決めたらよいのかわからない」「指標の数が多すぎて運用が大変」「運用はしているものの成果につながっているのかわからない」といった不安を抱えていました。

ブランドKPIマネジメントは、運用の前にまずは策定ステップが重要です。策定ステップの全体像は以下の通りです。

▶STEP1:前提の確認
STEP2:ゴール(KGI)の設定
STEP3:注力ポイントの絞り込み(KPIの設定)
STEP4:目標設定(基準の設定)
STEP5:部署別アクションテーマの設定
STEP6:運用方法の確認~合意形成

それでは、各STEPを詳しくみていきましょう。

■STEP1:前提の確認
STEP1では、事業やブランドがどのようなステージにあるのか、外部環境適応の状況と課題をしっかり確認することがまずは重要です。

ブランドコラムNo.3用写真01.png

事業がどのステージにあるかによってブランドへの期待は変わってきます。中期経営計画や事業戦略資料、経営TOPからのメッセージなどに、経営としての考えが込められていることが多いので、最初の段階でしっかり擦り合わせしておきましょう。

■STEP2:ゴール(KGI)の設定  ※KGI=Key Goal Indicator
STEP1で、自社の事業やブランドがどのステージにあるのかを確認した後は、そのステージに合わせた適切なゴール指標を設定します。例えば、試行ステージでは認知率や想起率、拡大ステージでは検討率や購入率、多角ステージでは継続率や紹介率、再構築ステージではターゲットシェア、新カテゴリ想起率などがあるでしょう。

設定するポイントは2つです。1点目は、経営TOPと擦り合わせたブランドへの期待を「シンプルに」指標化すること。2点目は、ステージ以外に「業界特性」「ビジネスモデル」の観点も取り入れること。KGIは「業界特性×ビジネスモデル×ステージ」 この3つの掛け合わせから、自社が市場の中で「勝つ」ために必要なこと、あるいは「ブランドに求められる役割や成果」を見出し、自ブランドに最適なものとして設定することが重要です。

こうして改めて書くと、このSTEP1~2は当然のことのように感じますが、実は、「ブランド活動/ブランディングが上手く進まない」とご相談いただく企業様のかなりの割合で、このSTEP1~2を省略してしまっているようです。

・ブランドと言えば「一般的には」認知・好意・NPS
 →認知率・好意度・NPS をKGIにしよう

・ブランドと言えば、広告宣伝活動によるイメージづくりが主体
 →広告宣伝費の費用対効果、接触者のイメージ獲得率をKGIにしよう

・トレンドとして、インターナル/インナーブランディングは重要だし、ブランドは「社員の一体感やローヤリティを高める」ことが鍵
→従業員の意識調査や、毎年やっているES調査の総合満足度、エンゲージメントをKGIにしよう

このような考え方で、安易にKGIを設定してしまうと、必ず社内の共感や、一貫した事業活動としての落とし込みに齟齬をきたすことになるので、このSTEP1~2は、意識してしっかりと議論を尽くすようにしましょう。

■STEP3:注力ポイントの絞込(KPI設定)
ステージを確認しKGIを決めた後は、いよいよKPIの設定です。弊社推奨の設定方法は次の通りです。

・KGIの影響因子(KPI候補)を洗い出す
・カスタマージャーニーを描く→購買に至るまでの『理想のストーリー』を作り上げた上で、注力するポイントを特定
・KPIを2-3個に絞り込む→ブランドKGI(①)への影響度、購買プロセス(②)を考慮して総合判断

KPIとは言わずもがなですが「Key Performance Indicator」。鍵(Key)が多すぎるとどこから実行すればよいのかわからなくなるため、できれば3つ程度、最大でも5つ程度に絞るようにしましょう。その上で定期的にKGIとの関係性をウォッチして指標の見直しを図っていくことが重要です。

■STEP4:目標設定(基準の設定)
KPIが決まったら具体的な目標数値を設定していきましょう。設定の方法は大きく3つあります。

方法①ベンチマーク:特定の競合の数値を数年後越すことを目標に数値を段階的に設定
方法②オンリーワン:各指標それぞれで、トップの値をとる競合の値を目標として設定
方法③ボトムアップ:自社の現状から毎年一定の数値上昇を目標として設定

■STEP5:部署別アクションテーマの設定
ここがSETP最大のポイントです。KPIを作っただけで終わらせず、それを達成するためのアクションテーマを“部門レベル”で策定することこそが最も重要です。

しかし、このSTEP5をなかなか実施できない企業が多いのも事実です。その要因として、アクションテーマ設定以前に、「ブランドに関する指標なんて意識したこともなかった」「売上等の目に見えてわかりやすい数字目標を短期的に追ってきた」、ブランドを担う現場の各部署がそういった過去のパラダイムに引っ張られ、今までなかった「ブランド」という観点でのKPIを受け入れることができないでいるのです。そして、結局、部署別のアクションテーマとして、単に「ブランド強化」や「ブランド強化に資する取り組みの強化」といったような抽象的な言葉が置かれてしまっては、せっかく策定したKPIがまったく機能しません。

具体化したブランドを「概念」から「実践」に落とし込むためには、抽象的な概念を、部署・個人の具体的な目標と行動に落とし込むプロセスこそ重要なのです。

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■STEP6:運用方法の確認~合意形成
一度決めたブランド戦略は中期的(少なくとも3年程度)に固定させる一方で、アクションはKPI検証に基づいて必要に応じて素早く修正する必要があります。速やかに検証サイクルを回していくためにも、下記の項目について、早い段階で関係者/関係部署間で合意形成を図っておくことが重要です。

・KGI/KPIの内容
・部署別アクションテーマの内容
・KPI観測のタイミング、数値の取得方法
・それらを共有~振り返り~次の課題や目標へとつなげる会議体

KPIとアクションの検証を繰り返し実施していくプロセスが、組織としてブランドに対する理解や共通認識を高めていきます。そういう面からもこのSTEP6も非常に重要なポイントと言えます。

■最後に
STEP1~6までをお伝えしてきましたが、ブランド戦略を「概念」から「実践」に落とし込むために、まず大前提として、経営戦略・事業戦略におけるブランドの役割や期待を明確にすることです。中期経営計画や事業戦略資料、TOPインタビュー・ヒアリングなどを議論の素材にし、経営層や経営企画、各部門のTOPとブランドについて議論する。それを擦り合わせるだけでも、戦略の実効性が大きく向上するはずです。


全三回に渡って、ブランドマネジメントについてお伝えしてきました。

第一回の冒頭でもお話しした通り、「言葉は知っている」「言語としての意味は分かる」としても、それを実践・運用していくには、やはり踏まえるべき考え方やポイントがたくさんあり、一筋縄ではいかないな、と感じられた方も多いのではないでしょうか?

しかし、お伝えしたことのほとんどは、実は、「ブランド」という文脈以外のビジネスシーンでは、比較的当たり前に行われていることでもあります。つまり、「ブランド」という曖昧な概念だからこそ、「ビジネスを推進していくための重要な『軸』」として扱い、可視化し、指標化し、アクションとして具体化し、PDCAを回していく。

そういう「経営・マネジメントとして当たり前のこと」を、ブランディング上でも当たり前に思考して運用していくべきだ、という意識を持つことが、ブランドマネジメントの第一歩なのではないでしょうか?

全三回のコラムでお伝えしたことが、その第一歩を正しく踏み出すきっかけになれば幸いです。

 

 

 

 


 

 

 

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