マクセルと言えば、国内初の国産アルカリ乾電池生産や国内初のカセットテープ商品化などを手がけるmaxellブランドで、広く認知されている会社だ。しかし、2017年10月に日立グループから独立し社名を変更。さらには、事業ポートフォリオ変革の真っ只中にいる。この大きな変革のタイミングで、マクセルはどのようにリブランディングに取り組んでいるのか。「組織改編前のブランド」「組織改編後のブランド」「マクセルグループとしての成長戦略とブランド」という3つのフェーズに分けて、具体的な取り組みが披露された。
【マクセルホールディングスHP】https://www.maxell.co.jp/

マクセルグループから学ぶ、『リブランディング』で経営層が心得ておくべき5つのこと(前編:背景)
マクセルグループから学ぶ、『リブランディング』で経営層が心得ておくべき5つのこと(中編:独立後)

マクセルグループの成長戦略を支えるために。ブランドは企業価値向上の財産の1つ

伊佐:では最後に、『マクセルグループとしての成長戦略とブランド』についてお聞かせください。

小原氏:社内外に対して『自動車』『住生活・インフラ』『健康・理美容』という成長3分野を示しています。例えば『住生活・インフラ』で言えば、ガスや水道などのメーター用に電池が使われていますし、『健康・理美容』で言えば、アンチエイジング・高齢化に伴い大きくなっていくマーケットということで、エステ用家電やエクササイズ用の器具を提供しています。

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これから3つの分野の現在の売り上げは約1,500億円ですが、直近で1,730億円、また2020年代には3,000億円を目指したい 。 MBPの下、既存技術と共鳴する形で、新しい価値を見出して提供していきたい。これが我々の成長戦略です。

グループ戦略におけるブランドは、企業価値を上げていく上での最大の財産の1つだと考えています。なので、色やロゴの配置など、ブランドポリシーについても、研修や勉強会といった社員への直接のコミュニケーションを通じて、規定を明確にしてきました。

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またグループブランド戦略として、グループブランドであるmaxellが、IZUMI をはじめとした事業ブランドをサポートすることで事業が大きくなり、最終的にはmaxellブランドに価値が蓄積されるという、良いサイクルを目指しています。

今後のブランティング活動としては、『脱コモディティーブランディング』に『技術ブランディング』『グローバルブランディング』『組織活性化』の4つを行っていきます。

例えば、3つ目の『グローバルブランディング』。これまでの活動はインナーもアウターも、9割以上が国内向けでした。しかし弊社は、南米・北米・欧州や中国、世界中に製造会社・販売会社が点在している会社です。これらをまとめていくには、時間的にも人的にもパワーがかかるものなので、2019年はその準備の時期と考えています。そして、2020年にはグローバルブランディングを本格始動していきたい。

当然、地域によって製造している商品、強みのある商品は違いますので、地域に根ざして、地域に求められるブランディングと、我々グループとして求めるグループブランディングを両立していきたいです。

4つ目の『組織活性化』については、色々ありますが、プラットフォームを作る取り組みを始めています。トップダウンはもちろんミドルから上げていくメカニズムも必要だと考えました。5,400名社員がいることを考えると、全社員で何かを行うことは非現実的です。そこで、選抜された20名の社員から社長や役員に向けて、会社に対する問題意識を元に改善案を提案してもらうことを考えました。こういった場を作ることで、組織活性化を仕掛けていきたいと思っています。

やるべきは、ブランドの『一貫性』と『継続性』を担保すること

伊佐:ありがとうございます。本日マクセルさんからお話いただいた内容は、非常に多岐に渡りました。私からは「ブランドとは」ということについてまとめたいと思います。

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経営上のブランドというのは色々あり、各種ステークホルダーからの期待を高めることは重要で、安定的な事業成長の基盤につながります。例えば従業員に対しては、ロイヤリティやエンゲージメントの向上、または離職率の低下につながると言えます。

採用候補者については、本日マクセルさんからも再三お話がありましたが、売り手市場で採用が難しくなる中においても、採用シーンで威力を発揮してくれるのがブランドだと言えます。

そのブランドを高めるためには、ステークホルダーの期待を高め続けることが重要。そして、その際に大事になってくるのが『一貫性』と『継続性』です。1つの大きな出来事がいつまでも人の印象に残るということは、事実あります。しかし、ブランティングというのは、体験などを通じて何度も繰り返し頭の中に刷り込まれていって、出来上がっていくものです。

これは先ほどもお話をしましたが、ブランドの『一貫性』と『継続性』を担保する上で問題となるのは、3つの壁です。『理解・共感の壁』と『可視化・共有化の壁』そして『業務接続の壁』。

そして、この3つの壁があることを前提として、全体像の中でブランディングをしていかなければならない。それが、3つの壁を乗り越えるためのセオリーです。

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我々がブランディングのお手伝いをする場合は、「この構図の中で足りないパーツは何か」「機能不全に陥っているのはどこか」といった診断から入っていくことが多いです。ちなみに大事なことは、『ブランドコンセプト』。ブランドが提供するべき価値が、『顧客接点への伝達』まで一貫して反映されているのかどうかまで、注意深く見ていただきたいと思います。

「リブランディングのポイント5つ」の中でも重要なのは、トップの明確な意思表明

ちなみに本日、「マクセルグループから学ぶ、『リブランディング』で経営層が心得ておくべき5つのこと 」というテーマでお送りしてきましたので、リブランディングのポイントを5つにまとめました。

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リブランディングのポイントとしてお伝えしておきたいのは、「リブランディングは難しい」ということです。新たにブランドを作り浸透させることよりも、遥かに労力がかかります。だからこそここでお伝えしたいのは、4つ目「1st.トップダウン→2nd.ミドルアップダウン」です。

トップダウンというとネガティブな表現に聞こえる方もいるかもしれませんが、トップが明確な意思を示すという意味です。リブランディングをスタートする際、トップが明確なメッセージを発信し、そのあとに権限委譲をしながらミドルアップダウンしていくことが、セオリー。最初から「部長、頼んだよ」といって現場に任せる手法も、頓挫しがちなのでおすすめしません。繰り返しになりますが、まずトップの明確な意思表示から始めましょう。

それから、最後に5つ目「戦略と紐づいた意義・目標・成果・指標」にも触れておきます。企業としてブランディングを行う以上は、成長戦略や収益とつなげる必要があります。しかし、中期経営計画は3年で描くけれども、ブランドに関する施策が収益に跳ね返ってくるまでには5年はかかる。つまり2年分のギャップがあるということを念頭においてください。

時間軸が異なるので、葛藤は起こります。しかし、事業戦略と紐付けて、意義や目標を明確に、そして追いかけていく指標やそれで残すべき成果を定めておくことが、その葛藤を超えてブランディングの活動を続けていくことにつながります。リブランディングにおける5つのポイント、ぜひ参考にしていただければと思います。


多くの方々にご参加頂きました。ありがとうございました!

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