価値のある商品・サービスを提供していても、その価値が顧客に伝わらなければブランドとして成長し続けることは難しいでしょう。ブランドやマーケティング領域を担当されている皆様の中には、「価値を顧客に伝える・認識してもらう」ことの難しさを実感されている方も多いのではないでしょうか。強いブランドを創り上げるためには、「良いモノであれば売れる」という考え方ではなく「良いモノと認識してもらって初めて売れる」という考え方をすることが重要です。

そこで、今回のブログでは、ブランドの価値を適切に顧客に届け、その価値を認識してもらうための手法として、「PR」と「コンテンツマーケティング」という2つの手法に着目し、「買う理由」を創るためのブランドコミュニケーションの方法論についてお伝えします。(弊社で定期的に開催しているセミナーのまとめ記事となります)

ブランドコミュニケーションの全体像

さて、具体的な方法論の前に、前提としてブランドコミュニケーションの全体像を説明します。そもそもコミュニケーションをざっくり構造化すると、「何を伝えるか」「どのように伝えるか」という2つの要素に分けられます。「何を」はブランド価値そのものを指し、「どのように」は「どんなメッセージで」「どのメディアで」「どのような手法で」伝えるかを指します。ちなみに本ブログでは、「どのように」の中でも、「PR」と「コンテンツマーケティング」の2手法を中心にお伝えすることになります。

ただし注意するべきなのは、「どのように」の手法はトレンドによって移り変わりが激しいということです。「どのように(手法)」の変化に惑わされ、「何を(ブランド価値)」がおろそかになってしまっては本末転倒です。ですので、まず「何を(ブランド価値)」を明確化するための考え方から簡単にご紹介します。

ブランド価値を伝え、「買う理由」を創るPR・コンテンツマーケティングとは?
「何を」の要素が定まったと言えるためには、

  • ブランド価値の明確化(ブランドコンセプトの策定)
  • ブランディング活動全体の基盤整備(ブランドロードマップの策定)

これら2つの取り組みが必要になります。

本ブログの趣旨とは若干外れるので簡単にご説明しますと、ブランド価値を明確化する(ブランドコンセプトの策定)ためには、コアバリュー・ベネフィット・エビデンス・リソースという4つの概念によってブランドを構造的に捉えることがポイントになります。また、2つ目の取り組みであるブランドロードマップを策定する際の方法論は下記よりダウンロード可能です。よろしければご覧ください。
『ブランド戦略を「概念」から「実践」に落とし込むブランドロードマップ』

ブランド価値を「どのように」顧客に伝えるか~メディアの4タイプ~

ブランド価値が明確化できたら、次はそれを顧客に伝達していきます。ブランド価値を伝えるためのメディアは、その特性から4つのタイプに整理されます(PESOメディア)。以下、簡単にご紹介します。

1つ目のタイプは、「Paid media(ペイドメディア)」です。他者が所有するメディア枠を購入するもののことで、代表例はマスメディア広告やWeb広告、屋外広告などです。

2つ目のタイプは、「Earned media(アーンドメディア)」です。他者が所有するメディアに掲出されるもののことで、代表例はTVや新聞などのニュース報道です。

3つ目のタイプは、「Shared media(シェアードメディア)」です。これは、消費者が創り出すコンテンツに掲出されるもので、代表例はSNSや口コミサイトです。

4つ目のタイプは、「Owned media(オウンドメディア)」です。これは、自社が所有するメディアに掲出するもので、代表例は自社サイトや自社のSNSアカウントです。

ブランド価値を伝え、「買う理由」を創るPR・コンテンツマーケティングとは?ここで注意するべきことは、各メディアは完全に独立しているのではなく、互いに影響し合っているということです。例えば、自社の「Owned media(オウンドメディア)」上にブログ記事を掲載する、自社のSNSで投稿するといった方法で情報を発信したときに、それが顧客・消費者の手によって「Shared media(シェアードメディア)」上で拡散され、その広がりがメディアにキャッチされて「Earned media(アーンドメディア)」上でニュース番組の特集として取り上げられるなど、大きく話題化することがあります。このように、各メディアを横断した「情報波及をいかに起こせるか」や「情報波及を起こすことのできるコンテンツをいかに作り出せるか」という視点を持つことが必要と言えます。

ブランド価値を伝え、「買う理由」を創るPR・コンテンツマーケティングとは?
ここからは「PR」「コンテンツマーケティング」のそれぞれを、「情報波及を起こすことのできるコンテンツをいかに作り出せるか」という点に着目して解説します。

ブランド価値を世の中に広める「PR」の考え方と事例

まず「PR」について紹介します。弊社では「PR」を、プレスリリースや企画持ち込みなど自社の働きかけによって、「Earned media」や「Shared media」への情報掲出を行なっていく活動と捉えています。下図ピンク色の部分です。

ブランド価値を伝え、「買う理由」を創るPR・コンテンツマーケティングとは?
ちなみに「広告」との違いは、「広告」は自社起点で情報提供を行いますが、「PR」は第三者経由で信頼性の高い情報を提供することができるという点です。「PR」は企業が伝えたいブランド価値を、メディアに対して対価を払うことなしに、第三者メディアを通して消費者・顧客に伝えていく活動になります。そのため消費者・顧客にとっては、第三者からの伝達によって信頼性の高い「買う理由」が創られることになります。

しかしながら、ブランドが伝えたい事柄をそのままメディアが伝えてくれるとは限りません。そのため、ブランド価値をメディア視点に変換することが、PRにおいて最も重要になります。

ブランド価値を伝え、「買う理由」を創るPR・コンテンツマーケティングとは?

ブランドとして伝えたいこと(ブランドイン)をメディアが伝えたいこと(メディアアウト)に変換するためには、ブランド価値を世の中のトピックと結び付けることが必要です。そして、その観点として重要なものが4つあります。それは「社会性」「時流・季節性」「意外性」「実利性」です。それぞれ簡単に説明します。

  1. 「社会性」

    環境・健康・政治などに関する社会問題は、広く社会に知らせるべきだという理由でメディアに取り上げられやすいです。この観点をブランド価値と接続させるためには、「ミッション・ビジョンやコアバリューにどのような社会的価値があるか」を考えることがポイントです。
  2. 「時流・季節性」

    直近であればコロナ動向など、今だからこそ消費者が知りたい話題もメディアに取り上げられやすくなります。この観点をブランド価値と接続させるためには、「いまベネフィットを必要とする理由は何か」を考えることが重要です。
  3. 「意外性」

    業界初や既存の常識を覆す話題など、驚きや発見を与えられる話題もメディアが取り上げやすいテーマといえます。この観点をブランド価値と接続させるためには、「業界や市場において新規性の高い自社ベネフィットやエビデンスは何か」を考えることが重要です。
  4. 「実利性」

    消費者にとって利益を与えることができる話題(おトク情報など)もメディアから取り上げられやすいです。この観点をブランド価値と接続させるためには、「競合を明確に上回るベネフィットやエビデンス」を考えることがポイントです。

ブランド価値を伝え、「買う理由」を創るPR・コンテンツマーケティングとは?

以上のように、「PR」においては自社のブランド価値と世の中のトピックを接続させることで、メディアに取り上げてもらい、第三者目線の信頼性高い情報としてブランド価値を消費者・顧客に伝えていくことが重要です。

最近の「PR」の成功例としては、オイシックス社の「クレヨンしんちゃん」コラボ広告が注目を集めました。オイシックス社は、ブランドベネフィットの「時短調理(家事をラクにする)」を伝達するべく、2019年夏に、「クレヨンしんちゃん」のアニメ舞台である春日部駅に交通広告を出稿しました。「かあちゃんの夏休みはいつなんだろう」「かあちゃん、楽しい夏休みをありがとう」といった「しんのすけ」のつぶやきが話題になり、1週間でなんと20万以上のリツイートを獲得し、様々なメディアが取り上げる情報波及が実現しました。(詳しくは下記参考記事参照)


なぜ、ここまでの情報波及が生じたのでしょうか。一つの理由としては、前述の「社会性」の観点を満たしていたことが挙げられます。このオイシックス社の広告であれば、「夏休みで子供が家にいると、母親はいつも以上に大変」「女性の働き方の変化・多様化は進んでいるが、家事の大変さは中々変わらない」といった状況を捉えています。そして2つ目の理由としては、個人がSNSにシェアしたくなる“感情トリガー(今回のケースだと、感動)”を刺激できたということです。実際に、「うるっときてしまった」といった共感の声が多数寄せられたそうです。

ブランド価値を発信し、顧客を惹きつける「コンテンツマーケティング」の考え方と事例

次に「コンテンツマーケティング」です。弊社では、オウンドメディアを通じて、ターゲットとなる潜在顧客に価値のある情報を発信し、ブランドへの認知度や好感度を高めていくアプローチと捉えています。下図ピンク色の部分です。

ブランド価値を伝え、「買う理由」を創るPR・コンテンツマーケティングとは?

「コンテンツマーケティング」の誤ったアプローチとしてよくあるのは、自社商品の割引クーポンをSNSに投稿する、あるいはインフルエンサーをモデルとした商品紹介を行うWebカタログを作成するなど、積極的に自社商品やサービスを訴求といった内容です。これらは、施策としては必ずしもNGではないのですが、コンテンツマーケティングという観点だとNGになります。

「コンテンツマーケティング」では、商品やブランド価値そのものではなく、その商品やブランド価値を必要としている背景やお悩みに応えるコンテンツを提供し、あくまで消費者・顧客に有益な情報を提供するだけというスタンスを取ることが大事です。

では、具体的にどのようにしてコンテンツを作成するべきでしょうか。結論としては、ブランド価値を明確にした上で、それを「顧客が解決してほしいこと」へ変換し、その上でコンテンツに落とし込んでいきます。万が一「顧客が解決してほしいこと」への変換が不十分になってしまうと、“ただの売り込み”になってしまうため、ニーズ顕在層にしかアプローチできず、注意が必要です。

ブランド価値を伝え、「買う理由」を創るPR・コンテンツマーケティングとは?
事例としてライオン株式会社のオウンドメディア「Lidea(リディア)」を紹介します。このオウンドメディアは、日常生活における困りごとに対して解決策を提示するようなHow to記事を中心に配信されています。例えば、「ウレタンマスク 洗い方」でGoogle検索をすると、「Lidea」の記事が1位表示されます(2021/1/8現在)。このように、読者のお悩みに応えるコンテンツを提供することで、潜在顧客と接触しブランドの認知向上や好感度醸成を図っています。加えて、「時流・季節性」を意識したテーマを選定することも重要で、効果的に世の中の注目を集め、潜在顧客との接点を増やすことができます。


ここで参考までに、「Evoked set(想起集合)」という考え方を紹介します。Evoked setとは、何かを買おうとした際に、頭に浮かぶ好意的な選択肢の集合体のことです。あらゆるブランドにとって、消費者に一番最初に思い出してもらえるかどうか(=Evoked setに入れているかどうか)は、消費者に選ばれるかどうかの分け目になるため非常に重要です。そして、このEvoked set(想起集合)に入るためには、ブランドと顧客の「接触頻度」が重要になりますが、この「接触頻度」を高めるためにも、コンテンツマーケティングは有効だといえます。

以上が、皆様にお伝えしたかったことになります。いかがだったでしょうか。

簡単にまとめますと、

  • ブランド価値を効果的に消費者・顧客に伝達するには、各メディア間で情報波及を起こすことができるコンテンツを作り出すことが肝になる
  • 「PR」の特徴は、信頼性の高い情報として受け取ってもらえること。PR活動を促進するには「ブランドとして伝えたいこと」を「メディアが取り上げる理由」に変換することが重要であり、「ブランド価値と世の中のトピックをいかに接続するか」という視点を持つことが必要になる
  • 「コンテンツマーケティング」の特徴は、ブランドの潜在顧客にアプローチできることであり、これを実行するには、顧客のお悩みを解決できる情報を提供する(×ただの売り込み)ことが重要になる
少しでも有意義な情報を提供できていれば、幸いです。

 

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