こんにちは、株式会社フォワードで代表をしている加藤です。
私たち、カンボジア1部リーグでシェムリアップを拠点とする、アンコールタイガーFCは
昨日、カンボジアプロサッカーリーグが主催する【Cambodia Football Award】で、最も多くのファンを持つクラブ(特別賞)を受賞しました。
 
突然ですが、1マイル4分の壁って知ってますか??
昔人気だった1マイル走(約1600m)で、1923年に作られた4分10秒という記録がずっと破られず、学者も人間が4分を切るのは無理だ、と言われてました。
 
そして、37年後バニスターさんという人が初めて4分を切って記録を破ったその年、1年間で23人の選手が4分を切る記録を出した、というものです。
 
37年間誰一人4分を超えられなかったのに、1人超えた人がでたら23人一気に超えちゃったんです。
 
一般的には無理だよな、と思ってたら、無理なんです。でも、いけると思ったらいけることも案外多い。
これって人々の日常の中にも多くないですか?
 
今回は賞を受賞した機会に、カンボジアリーグでこんなに集客するのは無理だって思われていたことを可能にした3つのことをシェアしたいと思ってます。
(抽象化すれば色んなことに参考にして頂けそうな気がします)

2015年2月にクラブを買収してから4年目。この受賞は嬉しかったんですが、何が嬉しかったか。
この賞は今年から新設されたんです。というのもこれまでカンボジアでは、ここまで多くのファンを集めるクラブが
なかったし、そこにそもそも注力をしていなかった。
 
そういう意味では偉ぶるつもりはないけれど、タイガーがカンボジアのサッカー界を変革に大きく貢献している思っているし、
多くのサッカー関係者、メディア、地元の方々からそういう言葉をもらいます。シンプルに嬉しい。
 
今季は平均観客数1900人(去年は1300人でリーグ平均は300人程度)、そしてホームのシェムリアップスタジアムを満員にして、
カンボジアリーグレコードの4257人を記録。(実際はチケット買ってない人が侵入したりして4500人くらい)カンボジアサッカー界を変えた3つのこと(画像2)
 
 この時は代表選手を多数抱える格上相手に先制されてのシーソーゲームで2-2の引き分けに。
ファンの力が間違いなく後押しに。同点ゴールの熱気はすごかった。
 
買収1年目の当時からタイガーを知る方は今の集客状況にみんな驚きます。僕たちは3つのことを変えました。
 
1.ホームタウンを変えた
2.体制を変えた
3.基準を変えた
 
1.ホームタウンを変えた
カンボジアのクラブはほぼ全てのクラブが首都プノンペンでした。なのでファンもどこを応援してよいかわからず、
特定のクラブというよりもサッカー好きが好きな選手や強いチームを見に行くという状況。
 
カンボジアサッカー視点で見ると、ファン獲得・選手発掘など多くの面で機会損失をしてました。
そこに風穴を開けるべく、タイガーが先頭を切ってアンコールワットのある街、シェムリアップに2017年に移転しました。(外資が移転って勇気いるんですよね)
 
プノンペンは150万人の都市で地方出身者も沢山いて、そこに12クラブ。シェムリアップは20万人都市だけどもちろん地元出身が多く、そこに1クラブ。
 
20万人いて1クラブしかないのだから、ファン獲得についてはちゃんとマーケティングすれば増やせる自信はありました。
 
※実は、全く同じタイミングでサッカー協会会長の娘婿がオーナーを務めるシェムリアップの当時2部のクラブと本田圭佑さんが共同経営を始めたので一気に2つのクラブになったのですが。
 
シェムリスタジアムの観客席や約4000人。たったの4000人です。
なんてこたない、4000人と友達になればいいだけ。(と思ったけど、そんなに簡単じゃなかった)
 
まずは来てくれたお客さんに名前を憶えてもらおうと、毎回チームカラーのオレンジスーツを来て、1人1人を出迎えました。
たぶん今季は1万人くらいと握手したんじゃないかな。
 
カンボジアは格差が大きく権力社会でもあるので、オーナーは基本的に絶対権力を持ちます。
 
その中でオーナーが出迎えていることもカンボジア人からは不思議?に思えたみたいで、沢山の人から覚えてもらって、街やホテルや空港でも声をかけてもらうことが増えました。カンボジアサッカー界を変えた3つのこと(画像3)
 
2.体制を変えた
実はほとんどのカンボジアクラブは現場(選手、コーチ、トレーナー等)のみで、事業・マーケ部門はほとんど力を入れておらず、属人的に運営している。
 
タイガーはアクセンチュア出身のGM篠田とインドで英語スクールを経営していた木米、カンボジア人スタッフ4名体制。
(見出し画像はGM篠田です。写真はカンボジアサッカーでのNo.1カメラマン石川正頼さん撮影)
 
そして、ここは大事なのですが、カンボジアスタッフは優秀な人材を揃えるべく、サラリーは選手のレギュラー上位クラスです。
 
よく途上国でビジネスしてる人や駐在で、現地人は全然だめで使えないみたいなことを言う人(そういう人は好きじゃないのであまり近づかない)いるけれど、できる人できない人がいるのは、どの国だって一緒でしょ、と思う。
 
サッカー記者からなんでタイガーはそんなにお客さんが集まるの?とよく聞かれるのですが、
 
選手、コーチの貢献はもちろんですが、そもそものマーケサイドの体制・力量が違うんです。(常に高みを目指さなきゃだけど)
 
他クラブの発想だとこのフロントのサラリーをカットして、外国人選手の獲得に充てる。
 
正解はないけれど、計画なき単発強化は1年、2年は強くなっても蓄積されず、発展性はない。
 
すごい勢いで発展していくカンボジアの中で、今は最も強力な資産となるブランド力向上を重視しています。
(とはいっても試合に勝つことがサッカーなのであくまでもバランスの話ですが、かなりブランド・マーケティングに突っ込んでいる方だと思います)
 
途上国の場合、それがすぐにクラブ収益に繋がるかというとそうではない所が辛いのと、メンバーが現地のスポンサー営業しても聞かれるのが「どのくらいファンがいるの?」よりも「何位なの?」が圧倒的なので、その辺りは我慢しながら順位でも結果を出せるように頑張ります。
 
3.基準を変えた
優秀なスタッフを集めても、人って、みたことないもの、イメージできないものってなかなか頑張れないんですよね。
アンコールタイガーFCのミッションは、「カンボジア国民にとっての夢と希望と勇気の象徴となり、日々の生活の心の潤いになる」
 
なのですが、タイガーもシェムリアップ来る前までは、観客100人なんていう試合もあったし、
ミッションを事あるごとにずっと言い続けて、気持ちではそこに向けてみんな頑張ってくれていたと思うけれど、実感はなかったかもしれない。
 
シェムリに移転して、「よし!このスタジアムを満員にしよう!」と言っても心の中では難しい、と思ってたかもしれない。
優秀なスタッフだし頭が良ければよいほど、過去や他クラブをみて冷静に分析しちゃうから。
 
そこまで強くもないし、これまで人気だった訳でもない。これまでのタイガーの基準はせいぜい頑張っても700人。
人間は固定概念が強いので頑張って700人というのが脳にインプットされちゃう。最初に書いた1マイル4分の壁と一緒ですね。
難しいと思ったら人間だれでも足が止まる。(負け癖がついているとはこのこと)
 
僕たちは、基準変えするために、2017年にシェムリに部分移転後のある試合で、3000人集客プロジェクト(これまでの最高集客数の4倍)を掲げました。
 
他の業務は捨てていいからこの試合に全てをかけよう!ということで、自分たちの全精力とプライドをかけて、走り回りました。
雨天もあり3000人には届かず、それでも2100人集まりました。
 
それでも3倍です。見たことない視界を体験して、基準があがりました。「あ、普通に2100人って集まるんだ」って脳にインプットされたんですね。
 
ここからフロントスタッフは強くなっていきます。カンボジアの中では、タイガーは企画やオンラインなど外から見えやすい活動がうまい、という印象なのですが、
実は一番強いのは、GM篠田を中心としたオフラインで泥臭い活動も含めてやり切ることです。
これをやり切れるのは脳にインプットされた基準の高さなのかな、と思います。
 
何を基準にするかってほんとに組織や人の成長にとって大事だなぁと実感しました。
 
他のサッカー関係者も選手もスタッフも、シェムリアップで4500人を動員するなんて1年半前は思わなかったと思う。
でも、その景色が見えていればできると思う。
 
僕自身も頭の中でもどんどん景色をアップデートして、仲間と共有して、素敵な景色を世界に拡げていきたいと思います。
 
来年からは、カンボジアという枠組みではなく、一般的なプロサッカークラブ経営という枠組みから大きく外れたことへの
挑戦が決まっています。(これはむっちゃ楽しみ)
 
追記:
サッカー好きなスタートアップや企業経営者の皆さんで、コラボレーションをしながら、サッカークラブを超えたサッカークラブ(今はカンボジアとナイジェリア)を一緒に作っていくことに興味をあったらご連絡お待ちしています。