大手航空会社の寡占状態だった日本の空に、規制緩和第1号として参入したスカイマーク株式会社。しかしその後、民事再生法の適用を申請し、上場を廃止。2015年よりファンド参入によって経営陣を刷新し、再生の道を歩む中、ついに17年には日本の全航空会社を対象にしたある分野で1位に輝いた。スカイマーク社はいかに経営危機という厳しい状況から復活を遂げたのか。その理由は、経営陣による仕組みの構築だけではなく、創意工夫に溢れる組織風土が生まれる現場にあった。

■プロフィール
スカイマーク株式会社
取締役執行役員 西岡 成浩氏写真_西岡成浩 201809
東京大学法学部卒業。2003年に東京海上アセットマネジメント投信株式会社
(現東京海上アセットマネジメント株式会社)へ入社し、食品・飲料、ノンバンクセクターの
リサーチアナリストとして投資調査業務に従事。2005年2月にモルガン・スタンレー証券会社
(現モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社)へ入社し、コンシューマー、金融機関、テクノロジー、
通信・メディアを含む幅広い業界において、M&Aや資金調達などの投資銀行業務に従事。
2014年9月インテグラル株式会社入社。スカイマーク株式会社への投資を担当し、
2015年9月より同社の取締役執行役員として財務、経理、総務人事、上場準備を管掌。 

株式会社フォワード
代表取締役 加藤 明拓
明治大学卒業後、株式会社リンクアンドモチベーション入社。加藤2018_400×400
組織人事領域のコンサルティング業務に従事後、スポーツコンサルティング事業部の立ち上げ、
ブランドマネジメント事業部長を経て、2013年株式会社フォワードを設立。
国内大手企業やJリーグをはじめプロスポーツチームを対象に、
ブランド戦略策定~社内浸透、研修講師などの豊富な実績を持つ。

■イベント実施日
2018年1114日(水)

トップダウン経営の下、周囲の目を気にして言いたいことも言えない組織風土が定着

加藤明拓(以下、加藤):スカイマーク株式会社の西岡さんをお迎えして、「組織文化変革の進め方」というテーマでお話をおうかがいします。変革の内容をご理解いただくためにも前提の情報が必要になると思いますので、まずスカイマークという会社について ご説明いただけますでしょうか。

西岡成浩氏(以下、西岡氏):スカイマークの西岡でございます。私は、スカイマークの再生をお手伝いするというミッションの下、インテグラルというファンドより常駐していますが、この立場になってちょうど4年になりました。
スカイマークは全社員2,200名の会社で、国内の11都市を144便で運航している航空会社です。大手航空会社が提供するマイレージやラウンジを持たない代わりに、ボーイング737-800という単一機材で効率良く運航し、身近な価格で皆さまにフライトしていただくビジネスモデルです。

ひとつ特徴があるとすると「安全」は当然ですが、しっかりと時刻表通りに飛ぶことにこだわっています。飛行機は電車とは違って、時刻通りに飛ばないことが普通といっても良いのですが、ここにこだわっています。2017年度、国内の11ある航空会社の中で、
定時運航率(定時出発率)で1位を獲得することができました。手前味噌ですがこれは大変なことです。ダイヤをどう組むのか・予備の機材をどうスタンバイさせておくかといった仕組みだけでは実現できません。1便毎に分単位で、どうやって早く出発させるのか。現場メンバーレベルでの連携が必須になります。言い換えれば、航空会社の総合力が問われているものであり、一人ひとりの高い意識がないと実現できないものだと自負しております。

この、どうやって現場の一人ひとりの意識が変わっていったのかということについて、本日はお話しできればと思っていますが、
その前に、再建に入る前のスカイマークがどういう状態であったかをお話しします。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、1996年に会社が設立され、98年に羽田-福岡間で初就航しました。規制緩和第1号ということで非常に注目も浴びていましたが、2015年に民事再生法適用を東京地裁に申請。同年に東証第1部の上場が廃止になりました。債権者集会を経て、新生スカイマークがスタートしたという経緯があります。経営破綻の理由は結局のところ過剰投資です。身の丈を超えた、空飛ぶホテルと呼ばれるエアバス380の購入などを行ったことで、キャッシュフローが悪化し、資金繰りに行き詰ってしまいました。

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一方で組織はどういう状態だったかというと、当時の社長が強烈なリーダーシップを振るっていました。「乗りたくないやつは乗らなくていい!」「安全は優先するけれどもサービスは不要」という特徴的な方針のもと事業運営がなされていたようです。特に「クレームは受け付けない」については、クレームは消費者庁へという紙を座席にセットしたということで、世間の反感の大きさから、当時ニュースでも頻繁に取り上げられていたと思います。こういったマネジメントは、社内でも行われており、社員の電話が長引いていると社長が勝手に電話を切ったり、来客とのミーテイングであっても「いつまでやっているんだ」と怒鳴り込んできたりということは日常茶飯事であったと聞いています。

そうすると何が起こるかというと、もうみんな無難なことしかやらなくなるんです。「余計なことをして、告げ口されたら堪らない」「上から言われたことだけ、しておけばいい」といった風です。結局、経営破綻に陥ったのも、過剰投資しているにもかかわらず、
誰も社長を止めることができなかったということです。組織風土は、最悪の場合は会社の存亡にもかかわると言えると思います。

会社再生のために必要だったのは、一人ひとりの意識改革

加藤:経営陣を刷新し、新たな取締役6名で新生スカイマークはスタートしたと思いますが、一体、何から始めたのでしょうか。

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西岡氏:新体制発足前でしたが、購入をキャンセルした機体にかかわる賠償問題の解消など幾つかの外科的処置は施しました。基本は固定費の削減ということですが、経営破綻の原因は余剰人員ではなかったので、破綻直後に全拠点を訪問して、人員削減と給与カットはしないことを説明して回りました。

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170億円もの営業赤字だったところから、翌年には15億円の営業黒字というところに持っていけましたが、会社の再生にはお客様にたくさんご搭乗いただかなくてはと考えました。以前の方針の根底にある、安ければ乗るだろうという考えではお客様には受け入れていただけない。社員一人ひとりの意識を変えて、オペレーションを磨き上げようと考えました。しかしこれは漢方療法のようなもので、結果が出るまでに少し時間が必要であるとも理解していました。

加藤:社員の意識改革に向けて、具体的にどのようなことに取り組まれたのでしょうか。

取り組んだのは、一人ひとりのベクトルをそろえて出力を高めること

西岡:色々と模索した上で取り組んだのは、2つのことでした。ひとつは、『会社が向かう方向を明確にすること』。       つまりは、一人ひとりのベクトルをそろえることです。もうひとつが、『社員が力を発揮するための環境を整えること』です。一人ひとりのベクトルの出力を高めるという意味なのですが、100の力を持っていても様々な事情で30の力しか出せない時もある。様々な出力があることを踏まえて、できる限り100へ向けて高めることに取り組んできました。

まずひとつ目のベクトルをそろえることについてですが、こういうことをお客様に実行しようと社員に示すためにまとめた、スカイマークの「お客様への約束」です。『安全』と『定時性』と『お客様の満足』、この3つを実現しようと伝えました。

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その上で具体的に取り組んだことは幾つかあります。例えば、経営陣から社員への発信として、様々なツールを用いながら、愚直に同じメッセージを繰り返し伝えてきました。「さやま便り」とは、毎週1回イントラに上げる、会長の佐山(代表取締役会長の佐山展生氏)から社員へのメッセージのことです。そのとき大切にしているキーワードを必ず込めてメッセージは書かれています。

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他には、誰にでもわかりやすいシンプルな目標設定として、定時性日本一を掲げました。営業利益率やROE%といった指標はよくありますが、これは現場には全然響きません。一方で、飛行機が定時に出発するという指標は社員の誰が見てもわかるもの。これを掲げて皆の目標にしました。

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加藤:一人ひとりのベクトルの出力を高める取り組みについてもお聞かせください。

西岡氏:以前のスカイマークには、無難にやる・自分の意見は言わないという雰囲気が蔓延していましたので、まずとにかく自分の意見を言って良いんだという雰囲気づくりを、様々な取り組みを通じて行いました。

181114_03+例えばアイデアシート制度ですが、社員の誰もが会社を一歩でもよくするようなアイデアを自由に提案できるというものです。社員は最初半信半疑だったと思います。しかし、会社が自分や同僚のアイデアを実行してくれたという経験を積み重ねていくことで、一人ひとりの出力を上げる動きにつながっていたのだと思います。今はアイデアがどんどん出ますし、それに伴って社員同士のコミュニケーションも増えて来たと感じています。

会社と社員の信頼関係が高まった結果、顧客からも支持される会社へ

加藤:実際に数値としても変化が表れているそうですね。

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西岡氏:初就航してから20年ですが、2017年度には搭乗くださったお客様の数が過去最高を記録しました。一連の取り組みを通じて私自身が学んだのは、会社がしっかり方向を示し、社員の皆さんがそこについてきてくれる。このサイクルを回すことが大事なのだということです。小さくても一つひとつ、社員との信頼を築いていくことで、この会社は信頼して良いんだという気持ちが社員の中に芽生えてきたのではないかと思います。そして会社が示した誰でもわかるシンプルな目標に対して、社員一人ひとりが動いてきてくれたからこそ、お客様にご支持いただける会社へと少しずつ変化してきているのではないかと感じています。


多くの方々にご参加頂きました。ありがとうございました!

 

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